フォトグラムとは、写真印画紙の上に「もの」を置き、光を当て「もの」のシルエットや光の軌跡を定着する技法である。
芸術表現としてモホリ・ナジ、マン・レイのレイヨグラム、瑛九のフォトデッサンが有名である。
フォトグラムは直接的に光を扱い、対象物を通して結果的には光そのものを捉えることになるのである。
それは写真技術の必然であり、写真そのものが光によって支配されているということである。
フォトグラムは印画紙に光を使って描く絵画である。
フォトグラムはシルエット(ネガ像)が基本となる。
写真はネガとポジの両方で成り立っており、フォトグラムも同様にそうなのである。
基本形のフォトグラムにオリジナルの方法を加え、視点を変えることによって、ポジ像を感じさせることが出来る。
ネガ像とポジ像の中間を探ることで出来る絵は、曖昧で不安定であり、そのことが魅力である。
作品のモチーフに花が使われている。花のそれぞれにテーマの根本があるのではない。
花には思い入れや物語はあるが、光を捉えるための切っ掛けに過ぎないのである。
花のもつ魅力や美しさに対して出来るだけニュートラルな態度で関わりたい。
花や写真を選んだのは偶然と言ってよいが、それは絵画を勉強した私にとっての必然であろう。
作品で大切なことはフォトグラムや技術ではなく、花でもない。
ただ、花をモチーフにしたとき、写真の材料を使ったときの必要最低限のこととして、美しく仕上げることは大切だと思っている。
全てへの敬意として。